夏を楽しく乗り切れそうなクラシック曲 夏を楽しく乗り切れそうなクラシック曲
片岡 夢児

Playlist Edited by 東京フィルハーモニー交響楽団コントラバス首席奏者
片岡 夢児

大阪府出身。東京藝術大学及び同大学院修士課程修了。大学院修了時にコントラバスとしては初の大学院アカンサス賞受賞。大学院在籍時に新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。同団を経て2018年より東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者に就任。第25回練馬区新人演奏会出演者オーディション弦楽器部門最優秀、同演奏会に出演。第3回秋吉台音楽コンクールコントラバス部門第2位。第4回秋吉台音楽コンクール弦楽器部門第2位(最高位)。第19回コンセールマロニエ21弦楽器部門第2位。第1回K弦楽器コンクール第1位。第13回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽器部門第3位。コントラバスを永島義男氏に師事。また、国内外の著名な奏者のマスタークラスや公開講座を受講。練馬区演奏家協会会員。

夏を楽しく乗り切れそうなクラシック曲

片岡 夢児

  • 協奏曲集《四季》 第2番 ト短調 作品8の2《夏》: 第1楽章: Allegro Non Molto - Allegro

    ギドン・クレーメル

  • 協奏曲集《四季》 第2番 ト短調 作品8の2《夏》: 第2楽章: Adagio- Presto - Adagio

    ギドン・クレーメル

  • 協奏曲集《四季》 第2番 ト短調 作品8の2《夏》: 第3楽章: Presto

    ギドン・クレーメル

  • 王宮の花火の音楽 HWV351: 1.序曲

    オルフェウス室内管弦楽団

  • 海―3つの交響的スケッチ: 第1曲:海の夜明けより真昼まで

    パリ管弦楽団

  • 海―3つの交響的スケッチ: 第2曲:波の戯れ

    パリ管弦楽団

  • 海―3つの交響的スケッチ: 第3曲:風の海の対話

    パリ管弦楽団

  • Mussorgsky: Une nuit sur le mont chauve

    マニュエル・ロザンタール

  • 組曲《動物の謝肉祭》: 第7曲: 水族館

    パスカル・ロジェ

  • 組曲《惑星》 作品32: 第1曲:火星―戦争をもたらすもの

    シカゴ交響楽団

プレイリスト作者からのコメント

僕は夏生まれで比較的暑さに強いので夏はどちらかと言えば好きな季節です。しかし、ここ数年は全国的に見ても酷暑続きで、各地で真夏日は当たり前、猛暑日も珍しくありませんよね。今年ももうじき訪れるであろうそんな季節を乗り切るのに力をくれそうな、そして夏をより楽しめそうなクラシック曲を選曲しました。


1〜3.ヴィヴァルディ作曲『四季』より「夏」
1楽章の冒頭や2楽章などの遅い場面ではうだるような暑さが、1楽章や3楽章の早い場面では厳しい暑さや荒れ狂う天候などが見事に表現された曲です。完全に私見なのですが、バロック音楽において調性というものの重要さや、表題音楽として見たときに、ヴィヴァルディは曲としてはさておき季節としては夏が1番嫌いだったのではと思います。過ごしやすい春と秋は長調で書かれているのに対し、夏と冬は短調、しかも冬は2楽章は暖炉で暖まっている描写のため長調ですが夏は全楽章通して短調…とはいえエアコンも扇風機も無い時代、冬は火で暖をとれても夏は凌ぎにくかった事でしょうし、服装も今より自由度が低かったようなので仕方ないかもしれませんね。当時は今より平均気温は低かったそうですが、室内では現代の方が過ごしやすいのは間違い無いでしょう。
そう言えば以前はエアコンは身体に良くないと言われていたような気がしますが、近年は室内での熱中症も増えている事もあり、冷やし過ぎなければむしろエアコンを推奨する風潮になりましたね。エアコン自体の性能が上がって身体に優しくなったと言う見方もある気がします。この曲をお聴きの皆様も、是非室内は快適に保って優雅にお過ごし頂きたいと思います。


4.ヘンデル作曲『王宮の花火の音楽』より「序曲」
戦の祝典のために作曲されたので季節は関係ありませんが、花火と聞くとやはり日本では夏の風物詩ですよね。残念ながら祝典は盛大に行われたものの花火は点火せず失敗に終わったようですが…。
残念と言えば昨年からのコロナ禍で日本各地の花火大会や夏祭りは中止を余儀なくされていますが、来年は皆様にワクチンが届き様々な催し物がまた楽しめるよう祈っております。日本とヨーロッパでは花火に対する感覚なども多少違いそうですが、今年の夏はせめて音楽の力で花火気分も味わって頂けたらと思います。


5〜7.ドビュッシー作曲『海』
この曲は3つの楽章からなる交響詩で、それぞれ「海上の夜明けから真昼まで」「波の戯れ」「風と海との対話」という副題が付けられています。この曲も季節の概念はありませんが、海と聞くとやはり夏をイメージしますよね。海水浴も今はなかなか難しいですが、ドビュッシーの洗練されたオーケストレーションで見事に表現された壮大な海の描写を感じて、海に想いを寄せてみてはいかがでしょう。
ちなみにこの曲の初版のスコアの表紙には葛飾北斎の『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が使われたのは有名な話ですね。本人の希望である事や彼の自室にも「神奈川沖浪裏」が飾られていた事から、北斎の浮世絵にインスピレーションを受けてこの曲が作曲された説もあります。残念ながら裏付ける資料などは何もないためあくまで憶測の域を出ませんが、日本の偉大な芸術家が描いた風景がかの大作曲家に影響を与え素晴らしい曲が生まれた、と考えた方がロマンがありますし我々も誇りに思えますよね。


8.ムソルグスキー作曲『禿山の一夜』
夏は海より山派の方にはこちらを(笑)。昔はよく友達同士などでよくこの質問を交わした覚えがありますが、実際どちらが多数派なのでしょうね。山をテーマにしたクラシック曲からわざわざこんな遊びに行けなさそうな山をセレクトしたのには理由があります。
この曲はロシアの民話を元に作られていますが、その内容は「聖ヨハネ祭前夜、禿山に地霊チェルノボーグが現れ手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎするが、夜明けと共に消え去っていく」といったもので、聖ヨハネ祭とはキリスト教での夏至祭の事なので暦で言えばしっかり夏に関係する曲でもあるのです。ヨーロッパでは聖ヨハネ祭の前や夏至の夜には不思議な事が起こると言った伝承がいくつかあるようで、プレイリストには入れませんでしたがメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」はシェイクスピアの同名の喜劇が元になっており、物語の中で夏至の夜に妖精の集う森に向かい、そこでは妖精王や女王も登場します。精霊と聞くとつい神聖や善良なイメージを抱きやすいですが、国や地域によってはその限りではないようですね。シェイクスピアでは喜劇ですが、禿山の一夜では悪魔と一緒に大騒ぎしますし、人間の善悪の価値観に収まる存在ではないのでしょう。また、世界の夏至祭にまつわる逸話にはカルト的なものもあったりするので、夏の肝試しがてら調べてみるのも良いかも知れません。


9.サン=サーンス作曲『動物の謝肉祭』より「水族館」
動物の謝肉祭は14曲からなる組曲で、この曲は7曲目にあたります。謝肉祭は復活祭(イースター)の46日前(灰の水曜日)の前夜まで行うため季節としての繋がりはありません。しかしいかがでしょう、この曲の抜群の清涼感。寒さや冷たさを感じる曲は沢山ありますが、心地よい「涼しさ」を感じるクラシック曲となると僕はこの曲を1番に挙げたいと思います。ちなみにコントラバスが活躍する5曲目の「象」ではベルリオーズの「ファウストの劫罰」から「妖精のワルツ」、メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」から「スケルツォ」がそれぞれパロディとして登場しますが、先述の夏至祭の流れから不思議なつながりを感じますね。全くの偶然ですが。


10.ホルスト作曲 組曲『惑星』より「火星」
暑い中聴く涼しい曲も良いですが、最後はむしろアツい曲で夏に打ち勝ちましょう。「暑い時こそ熱い物を」と言うと今はあまり歓迎されない体育会系な気もしますが、僕は嫌いじゃないです(笑)。熱い曲となると挙げればキリがありませんし、人によって千差万別、とても選びきれる物ではないでしょう。その数ある候補の中で僕がプレイリストに入れた、夏に打ち勝てそうな熱い曲が「火星」です。
この組曲自体どの曲も大好きですが、その中でも1番好きなのが1曲目の火星です。ご存知の通り惑星としての火星は太陽からは地球より遠く平均気温は約-60℃という極寒っぷりですが、赤い姿や、地球から最も近いが故の存在感から、ローマ神話の軍神の名を冠し、日本でも「火」星と呼ばれる事になったのでしょう。
ホルストはこの組曲を天体としての惑星と言うより、占星術としての惑星から着想を得たようで、実際に占星術の手解きを受けて惑星とローマ神話の対応を研究していました。組曲に地球が含まれないのもそのためです。各曲の副題はその対応する神々から取られたもので、火星は先述の通り軍神マルスから「戦いをもたらす者」という副題が付いています。ちなみに作曲当時は冥王星はまだ発見されておらず、発見されてから作曲に臨みましたが、完成する前に亡くなってしまいました。そのためホルストの研究家であるマシューズによる「冥王星、再生する者」を加えた、通称『惑星(冥王星付き)』は特にイギリスで好んで演奏されたようですが、冥王星が準惑星に変わった事により奇しくも元来の組曲の姿に戻る事となりました。
ところで、ローマ神話とギリシャ神話はほとんど同一視される事が一般的ですが、これは紀元前にギリシャから影響を受けたローマ人が、ローマ古代の神々をギリシャの神々に当てはめ、ギリシャ神話を積極的にローマ神話に取り入れた事によるものだそうですが、占星術にはローマ神話の神々が当てはめられているものの個人的にはギリシャ神話の神々の方が馴染み深くイメージも付けやすい気がします。
ですのでここでは天体と該当する神々(カッコ内にギリシャ神話での相当する神々)を紹介したいと思います。火星:戦と農耕の神マルス(アレス)、金星:愛と美の女神ウェヌス(アフロディーテ)、水星:商人や旅人の守護神メルクリウス(ヘルメス)、木星:主神、最高神ユピテル(ゼウス)、土星:大地、農耕の神サトゥルヌス(クロノス)、天王星:天空神ウラヌス(同、ギリシャ神話から輸入)。ちなみに冥王星は冥界の神プルートゥ(ハデス)です。僕は神話が好きで、他にもいくつか勉強した事があるのですが、クラシックは宗教関連だけでなく神話を題材にしている物も数多くありますので、皆様も機会がありましたら神話について調べてみていただけるとこの組曲だけでなく様々な曲をより楽しんでいただけるかも知れません。


さて、プレイリストの紹介は以上ですが、少しでも皆様が夏を楽しんでお過ごし頂く事の助力になりましたら幸いです。

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